【介護事業所におけるBCP(事業継続計画)策定のススメ】義務化への対応方法・作成事例まで詳しくご紹介!

schedule2022年5月16日 16時00分

令和3年に介護報酬改定が実施されました。その中のポイントのひとつがBCP(事業継続計画)策定の義務化です。昨今、新型コロナウイルスや自然災害などの影響から、介護事業所におけるBCP策定の重要度が上がったことから、改定内容に加えられたものと考えられます。

しかし、BCP策定といわれても「そもそもBCPって何?」という介護事業者様も多いことでしょう。そこで今回は、介護事業所におけるBCP策定のススメということで、BCPの概要や義務化への対応方法、作成事例などを紹介します。

BCP(事業継続計画)とは?

BCPとは、「Business Continuity Plan」の略語で、日本語では「事業継続計画」という意味です。

なお、内閣府の事業継続計画ガイドラインでは、BCPを以下のように定義しています。

「企業が自然災害や大火災、テロ攻撃といった緊急事態に遭遇した際、事業資産の損害を最小限に抑え、ドメインとなる事業の継続や早期復旧のための準備や、緊急時の対応手段、方針などを決めておく計画のこと」
参考:内閣府/事業継続計画ガイドライン

つまり、BCPとは何らかの事情によって事業の継続が困難になった際、事業活動レベルの落ち込みを小さくし、復旧に要する時間を短くするための施策といえるでしょう。

介護事業者がBCP策定に取り組むべき理由 | 義務化の要点とメリット

 近年、新型コロナウイルスや自然災害の影響によって、事業の継続が困難になった企業がたくさんありました。そのような状況を鑑みて、有事の際、迅速に事業を再開し継続するためのBCP策定に、多くの企業が注力している状況です。

加えて、令和3年の介護事業報酬改定によってCP策定が義務化されたことで更に拍車がかかっています。本章では「令和3年度_介護報酬改定」の概要と義務化された点、策定のメリットについて解説します。

「令和3年度_介護報酬改定」の概要

厚生労働省によると、令和3年度_介護報酬改定の概要は以下の通りです。

新型コロナウイルス感染症や大規模災害が発生する中で①『感染症や災害への対応力強化』を図るとともに、団塊の世代のすべてが75歳以上となる2025年に向けて、2040年も見据えながら、②『地域包括ケアシステムの推進』、③『自立支援・重度化防止の取組の推進』、④『介護人材の確保・介護現場の革新』、⑤『制度の安定性・持続可能性の確保』を図る。
出典:厚生労働省/令和3年度介護報酬改定の主な事項について

これら5つの改定項目の中のひとつである①「感染症や災害への対応力強化」において、BCP策定の義務化が規定されました。

義務化された点を詳しく解説

「感染症や災害への対応力強化」では「日頃からの備えと業務継続に向けた取組の推進」を、すべての介護事業者が実施しなくてはいけないと規定されています。

具体的には感染症や災害時においても、介護サービスを継続できる体制を構築するために、業務継続に向けた計画策定、および研修の実施や訓練が義務化された内容です。また、地域特性や施設の種類によって対策が異なるため、施設・事業所単位に策定しなくてはならないことも、大事なポイントです。

各事業所で実施するBCPの内容を可視化し、従業員が参考にして対応できる「ひな形」の作成まで義務づけられている点が、令和3年度_介護報酬改定の特徴です。

その他、BCP策定をすることのメリットとは

介護事業者がBCP策定をすることによって、以下4つのメリットが得られます。

❶企業・法人としての価値を高める
行政、取引先、利用者、従業員などから災害時の事業継続の対策ができていることが評価されることで、取引の拡大や企業価値の向上に繋がります。一方でBCP策定にかかる費用は国や自治体の補助金や助成金を活用できるので、費用負担を抑えて目的を果たすことが可能です。

❷災害に強い事業者になる
緊急時の対応力を鍛え、事業の早期復旧を可能にすることで、利用者・従業員を守ることができ、顧客流出を防止し、経営を維持できます。逆にリスク管理の不徹底から安全配慮義務を全うできない場合は、賠償責任を問われる可能性もあるため、この点のリスクヘッジの観点でも考えるべきでしょう。

❸中長期的な戦略に役立てられる
事業継続の対策を検討することで優先すべき業務をしぼり込んだり、企業・法人にとって重要な業務・プロセス・資材等の優先順位を把握することとなり、それが経営戦略の立案に繋がります。

❹企業・法人として社会的責任を果たす
企業・法人を守る経営者の姿勢を示すことで従業員の安心感を生み、ステイクホルダーとの関係強化に繋がります。また利用者の安全確保・早期の業務回復による雇用確保・地域貢献・地域との共生など、企業の社会的責任を果たすことができます。

BCP策定の具体的な手順やポイントまとめ

BCPを策定する際には、大きく以下3つの手順で進めることが重要です。それぞれのポイントについて解説します。

なお、介護施設・事業所におけるBCPの作成を支援するために開催された研修の資料と動画が以下、厚生労働省のWEBサイトで確認できますので、併せてご確認ください。
参考:厚生労働省/介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修

ステップ①:BCP方針の決定とリスクの洗い出し

BCPを策定する際には、まず経営層が中心となって方針を決める必要があります。

そのためには、自社の経営方針や事業戦略と照らし合わせ、果たすべき役割や責任、重要な項目を明確化しましょう。そのうえで、顧客や取引先、従業員の要求や要請を整理して、自社がやるべきことやBCPの目的を明確化することが重要です。

介護事業者に求められる基本方針は以下となります。
・サービスの継続
・利用者様の安全確保
・従業員とその家族の健康と雇用の維持
・地域や取引先の信用維持、強化

BCPの基本方針が定まったら、次はハザードマップなどを確認し、災害によるインフラ等への影響を考慮、それらが事業継続にどのようなリスクを与えるかを把握します。

想定されるリスクとしては以下のようなことがあげられます。

・電気・ガス・水道などのライフラインの停止
・交通網の麻痺による、職員の出社困難
・建物・設備等の破損
・従業員との連絡手段の麻痺
・パソコンなどの機器類、重要データの破損

これらのリスクによって、通常時と同様のサービス提供が難しくなることが想定されますので、重要度の高い業務から優先的に復旧・継続できるよう、以下についての検討が必要です。

・目標復旧時間:どれくらいの時間で復旧させるか ・目標復旧レベル:どの水準まで復旧させるか

ステップ②:BCPの内容を策定

顧客や取引先、従業員の要求や要請を踏まえ、重要業務の目標復旧時間と目標復旧レベルが決定したら、事業を継続させるための具体的な手段を策定します。

具体的な検討視点としては、重要業務の継続に不可欠な要素を確定することが重要です。そのうえで、以下2つのポイントを明確化しなければいけません。

【平常時の対応】代替戦略:重要業務継続に不可欠な拠点・要素が利用、取得できなくなった際の代替手段
①建物・備品の補修や代替利用に必要な物品の洗い出し・備え
②停電・ガス・断水等インフラの代替手段の確保
③情報やシステムの維持方法および停止時の代替手段

【緊急時の対応】現場の復旧戦略:想定されるリスクに対する防御、抑制、復旧措置
①BCP策定基準・行動基準・対応体制・対応拠点の決定
②安否確認方法・施設内外への避難方法・優先業務の継続方法・職員の管理など

ステップ③:教育・訓練と定期的な見直し

BCPが策定できたら、事前対策として経営者を含む全従業員に対して教育と訓練を実施します。

BCPを策定しても、従業員がその存在や内容、またそれらを遂行できる能力を持たなければ意味がありません。そのためには、まず従業員に事業を継続させることの重要性を理解してもらい、企業風土へ昇華させることがひとつのゴールといえるでしょう。

ただし、掲示板への掲載やマニュアルを配布するだけでは不十分です。想定されるリスクを従業員が認識するとともに、BCPの内容と自身の役割を理解してもらうための教育が欠かせません。

教育内容としては、具体的な施策の内容と実施するための教育、訓練はもちろん、現場での判断や意思決定ができるような訓練が挙げられます。また、施策やマニュアルを見直し、弱点や課題をみつけることも重要なポイントです。

そして、定期的にBCPの内容を見直すことも忘れてはいけません。

時代や事業の変化や時流に合わせて、内容を最適化したり、実際に施策が想定通り機能するかどうかを定期的に確認したりすることが必要です。

介護事業所におけるBCPの作成事例

介護事業所の中には、すでにBCPを作成したところも多数あります。例えば、埼玉県春日部市で2つの特別養護老人ホームを運営している社会福祉法人かがやき様のBCPは、以下のようなものです。

同施設では、厚生労働省のBCP作成例や他社のBCPを参考に「震災編」「水害編」「新型インフルエンザ等感染症(新型コロナウイルス感染症対応)編」の3つを策定。

それぞれについて、基本方針やBCP体制、想定される被害状況、緊急時対応フローなどを整備しています。また、初動体制から事業継続までを「発生から30分以内」「初動以後1時間経過」の段階に分け、リスクの抽出や発生直後の業務、継続する業務内容(初動から3日間)と詳細に規定している点が特徴です。
参考:社会福祉法人かがやき 事業継続計画(BCP)について

BCP策定にかかるお困りごとは[スマート介護]がまとめて解決!

義務化のため必要に迫られているのはもちろんですが、介護という重要な職務を継続するためには、BCP策定が必須です。これから検討を開始する介護事業者様は、今回紹介した内容を参考にして1日でも早くBCP策定を完遂させましょう。

スマート介護では、策定したBCPの内容に沿って必要になる商品・サービスのご提供、情報発信を随時実施させていただきますので、ぜひお役立てください。ここでは、おすすめのツールを3つ紹介します。

BCPに有効な連絡ツールとしては「LINE WORKS」の導入がおすすめです。

・LINE WORKS
LINE WORKSはLINE同様の操作感で利用できるメッセージアプリで、スマートフォン・PCで職場のスタッフや施設利用者・利用者の家族、取引先とつながります。掲示板機能による緊急連絡、アンケート機能による安否確認がBCPに役立ちます。アドレス帳は組織・チーム別に階層管理が可能、また、マニュアルなど資料を共有できるドライブも、必要な時にどこからでもアクセスできます。

LINE WORKS

・感染対策・防災・防犯用品カタログ2022「危機対策のキホン」
「危機対策のキホン」では、防災用品のみではなく、感染対策用品、防犯用品なども含め、約1,440アイテムを掲載しており、広くBCP対策に対応した商品ラインナップを取り揃えています。
様々なリスクが想定される現代において、お客様の防災・BCP対策の検討時にぜひお役立てください。
デジタルカタログはスマート介護のサイトからもアクセス可能。以下のリンクよりどうぞご覧ください。スマート介護会員のお客様は担当販売店へご連絡ください。カタログをお届けいたします。

スマート介護/危機対策のキホン

・サクッとstock
「サクッとstock」は備蓄品を備えたいけれど、沢山の商品があり、「何を選んだら良いのか?」「どれくらいの量が必要なのか?」がわからないという、お客様の課題をサポートするツールになります。
「備えたい人数」「備えたい日数」「必要なカテゴリ」さえわかれば、簡単に備蓄品の必要数量、合計金額をシミュレーションできます。シミュレーション結果は見積書と提案書で表示され、データとしてもダウンロードができますので、予算策定や社内稟議の際にもご活用いただけます。選んだ商品はもちろん、そのままwebでご購入いただくことも可能です。
備蓄品の初期選定の際にお役立てください。

サクッとstock

また2022年7月には、防災備蓄品の在庫・期限管理ツール「サクッとkeep」がリリース予定となります。 こちらは「既に備蓄品の備えはしているけれど、その維持・管理に課題をお持ちのお客様」におすすめのツールとなりますので、こちらも併せてご活用ください。

監修:丸山茜  防災士

スマート介護運営会社のプラス株式会社ジョインテックスカンパニーの商品戦略室に所属。
スマート介護・スマートオフィス・スマートスクールの3通販サービスに横断的な 防災・BCP関連商品・サービスの企画・推進を担当し、感染対策・防災・防犯用品 カタログ「危機対策のキホン」制作や防災用品の選定・見積りツール「サクッとstock」、 防災用品の 在庫・期限管理・買替サポートツール「サクッとkeep」の企画リリースに従事。

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